身近に感じたミイラたち

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 昨年から楽しみにしていた『大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語』を観に行った。

 今回のミイラたちは総勢6人。上は神官から下は幼児の男の子まで、時代も2800年前から1900年ほど前までと様々だ。

 展示の見どころは何といっても最新のCTスキャンで分析したミイラたちの状態だ。包帯でぐるぐる巻きにされた状態なので、ミイラの表情を直接うかがい知ることはできない。その代わり、包帯とミイラの間に入れられた護符や、ミイラの骨の状態など、通常では見ることのできない、ミイラの「究極の個人情報」を見ることができる。

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 それが、数千年前のミイラたちをより身近に感じさせられた。というのも、当たり前だが、CTスキャンの画像は、現代の病院で見るものと同じだ。数千年の時を超えて、「ミイラ」という「展示物」ではなく、「一人の生きていた人間」として、より身近に感じられた。

 たとえば、代々続く名家の神官であったという「ネスペルエンネブウ」は35~49歳で亡くなった男性のミイラだ。実は彼には数年前のミイラ展であったいるので「再会」だったのだが、前回は、棺の壮麗さにばかり目を奪されて、彼がどんな人物だったかは全く興味がわかなかった。

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 だが、今回の展示によると彼の病名は心血管疾患に、歯の強度な摩耗と歯科疾患だったという。以前のような、ただお棺とミイラ本体を展示するだけの方法であれば、「なんで死んだのかな」「男性なんだ」くらいの思考で止まっていたものが、今回のように病名を聞き、CTスキャンの画像をマジマジと見ると、「なんかあまり健康的な食生活ではなかったのかな」とか「歯磨きちゃんとしていなかったのかなぁ。歯磨き粉は何を使っていたんだろう」と急に現実的な疑問が沸々と湧いてくる。

 

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 3~5歳で亡くなったというローマ支配時代の後40~後55年ごろ生きたという「ハワラの少年」は、明らかに幼児体系の頭が大きい骨格をしている。丁寧に巻かれたミイラ包みを通じて親の悲しみが伝わってくるようだった。

 

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6人それぞれの人生を垣間見た気がして面白く、あっという間に2時間以上が経っていた。

 

※写真は公式HPとチラシより抜粋