猫のミイラの匂い

 先日訪れた『大英博物館 ミイラ展』。

 

人間のミイラばかりに心を奪われていたが、

 

国立科学博物館が所蔵する「猫」のミイラも初公開されていた。

 

これは徳島藩主蜂須賀家18代当主で、

 

鳥類学者・探検家でもあった蜂須賀正氏(まさうじ)(1903~53)が

 

エジプトで入手して持ち帰り、同博物館に寄贈したものだ。

 

 

 この猫のミイラは、幅3センチ・長さ25センチほどの筒状で、

 

筒の先端には猫の顔が描かれている。

 

 会場にいた小さな男の子が、母親に

 

「猫はこんな形してないよ」

 

と、なかなか鋭いコメントをしていた。

 

母親は

 

「多分、びよ~んとのびたところなんだよ」

 

と、返していて笑ってしまった。

 

確かに他の動物のミイラは生前の形のままなのに、

 

なぜ猫のミイラはこんな形にしたのか不思議だ。

 

 

 古代エジプトでは、様々な動物が「神」として崇められてた。

 

ネコはネズミなどを退治するため、悪霊や病気から人や家を守る

 

「バステト神」として多くの信仰を集めていた。

 

 

特に紀元前600年から西暦250年頃まで、

 

ネコのミイラがよくつくられていたという。

 

 

 特別展会場の猫のミイラのそばには

 

謎の小さなボックスがあった。

 

ボタンを押すと、蓋がパカッと両脇に開き、

 

猫のミイラの匂いが漂った。

 

 実はこれ、花王感覚科学研究所の調香師が

 

猫のミイラのにおいのもとを採集、分析して再現したものだ。

 

考古学専攻の友人からは「ミイラは臭い」と聞いていたので、

 

意を決して嗅いでみたが、臭くはない。

 

なんというか古い家にある、

 

何年も開けられていないおばあちゃんのタンスの中

 

みたいな匂いがした。

 

ちょっと懐かしいというか・・・笑。私だけかな。

 

人間のミイラの香りもいつか嗅いでみたいかも?!

 

 

身近に感じたミイラたち

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 昨年から楽しみにしていた『大英博物館ミイラ展 古代エジプト6つの物語』を観に行った。

 今回のミイラたちは総勢6人。上は神官から下は幼児の男の子まで、時代も2800年前から1900年ほど前までと様々だ。

 展示の見どころは何といっても最新のCTスキャンで分析したミイラたちの状態だ。包帯でぐるぐる巻きにされた状態なので、ミイラの表情を直接うかがい知ることはできない。その代わり、包帯とミイラの間に入れられた護符や、ミイラの骨の状態など、通常では見ることのできない、ミイラの「究極の個人情報」を見ることができる。

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 それが、数千年前のミイラたちをより身近に感じさせられた。というのも、当たり前だが、CTスキャンの画像は、現代の病院で見るものと同じだ。数千年の時を超えて、「ミイラ」という「展示物」ではなく、「一人の生きていた人間」として、より身近に感じられた。

 たとえば、代々続く名家の神官であったという「ネスペルエンネブウ」は35~49歳で亡くなった男性のミイラだ。実は彼には数年前のミイラ展であったいるので「再会」だったのだが、前回は、棺の壮麗さにばかり目を奪されて、彼がどんな人物だったかは全く興味がわかなかった。

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 だが、今回の展示によると彼の病名は心血管疾患に、歯の強度な摩耗と歯科疾患だったという。以前のような、ただお棺とミイラ本体を展示するだけの方法であれば、「なんで死んだのかな」「男性なんだ」くらいの思考で止まっていたものが、今回のように病名を聞き、CTスキャンの画像をマジマジと見ると、「なんかあまり健康的な食生活ではなかったのかな」とか「歯磨きちゃんとしていなかったのかなぁ。歯磨き粉は何を使っていたんだろう」と急に現実的な疑問が沸々と湧いてくる。

 

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 3~5歳で亡くなったというローマ支配時代の後40~後55年ごろ生きたという「ハワラの少年」は、明らかに幼児体系の頭が大きい骨格をしている。丁寧に巻かれたミイラ包みを通じて親の悲しみが伝わってくるようだった。

 

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6人それぞれの人生を垣間見た気がして面白く、あっという間に2時間以上が経っていた。

 

※写真は公式HPとチラシより抜粋